和流ルネッサンス倶楽部 6月水無月の会 レポート
日時:令和5年6月21日(水)13:30~15:30
会場:タイセイ株式会社 4階会議室
講師:久保山武 松下幸之助経営理念 実践インストラクター
梅雨の時期になりました。
気がついたら1年も半分が過ぎようとしています。
5月皐月の会に続き、当倶楽部の活動を様々な面でサポートいただいている、タイセイ株式会社本社会議室での開催です。
テーマは『松下幸之助が大切にした 人間大事の教えとは?』、
講師は松下幸之助経営理念実践インストラクター 久保山武氏です。
学生時代に松下幸之助さんの『人間としての成長』という本を読んで、この会社で働きたいという思いを強くし、入社後や海外部門での営業企画・宣伝企画、本社新事業の立ち上げ、九州ショウルームの所長を経験し、2019年から、人材開発部門にて、企業様の経営理念の実践を、実際現場に入らせていただいて、お手伝いをしているとのこと。
1.松下幸之助の生い立ち
和歌山市の裕福な農家に生まれたが、父親が事業に失敗。小学校を卒業できないまま大阪に奉公に出て、大阪の商人道を徹底的に学ぶ。
これからは電気の時代だと考え、今の関西電力に入社。
松下幸之助イコール経営の神様という言葉をよく耳にするかもしれないが、商人であると同時に技術者でもあった。
特許申請等にも積極的だったが、当時の上司は提案を聴いてくれなかった。
そこで、会社を辞めて、家族3人で松下電気器具製作所を設立。
アタッチメントクラブという創業の商品は、今でもアマゾンで購入可能。
2.企業は社会の公器
・企業の社会的責任とは
観光船の沈没事故で、企業の社長が謝罪会見を行っているのを見ると、乗客や乗組員の安全を最優先に考えていたら、観光船の無線を常に整備していたら、周りの観光業の仲間に悪天候で出ても大丈夫なのかと言う話をしてたら、こういう事故が果たして起こっただろうか。
経営者の倫理感が低くなり、短期的な利益ばかり追ってしまって、企業の存在意義が重要視されていない。経営者の価値観が変わってきているのではないか。また、従業員の価値観も個人主義になって、チームワークが醸成されない。
派遣社員や請負社員が増加することで企業に対しての求心力も下がってきているのではないか。
ヒト・モノ・カネは社会からの預かりものだから、社員として預かった人材を成長させる責任がある。
人材育成はコストではなく投資。社会の公器の意識がないと、企業の存続は難しいのではないか。
・経営理念の大切さ
松下幸之助氏が会社に立ち上げた時に、最初から経営理念があったわけではなく、従業員の数が増えていく中で、一体感を作り、従業員と使命感を共有することが必要だということで経営理念が作られた。
この会社は何のために存在している? この仕事をどういう目的で? またどのようなやり方で行っていくのかっていう基本の考え方がないと、事業をやっていてaかbかで迷う。
その時にaにしようとか、bにしようとか決めるのは、やっぱりこの経営理念がしっかりとないと、道を誤ってしまうことがある。
・会社の発展は社会が決める
メインバンクから『御社はどこまで拡張するのですか?』と訊かれた松下幸之助は、「それは私も分からない。喜んでいただける仕事をいていけば、もっと商品を作れよと言われるし』と応えた。
経営理念に基づいた行動は成功したらとても喜んで褒めたたえたが、経営理念に基づかない行動で成功しても全く喜ばずに、もし失敗したときは烈火のごとく叱ったというエピソードが残っている。
3.ものをつくる前に人をつくる
・人づくりで大切なことは?
得意先から松下電器は何をする会社だと訊かれたら、「松下電器は人を作るところでございます。
合わせて電器製品を作っております」と伝えるよう教えられた。
松下政経塾の第一期生を選ぶ時に、運が強いことと愛嬌があることの二つを重視した。
運が強いというのは、前向きに自分自身が捉えているということで、愛嬌があると人が集まってきたり、 場を明るくする。
・任せて任さず
松下幸之助は「好きこそものの上手なれ」と「任せて任さず」という言葉が好きだった。仕事はやりたいと思っている人に任せるが、任せっぱなしはだめ。絶えず頭の中で、任せた社員がしっかりとやってくれてるのか気にしていることが大事。 更に、松下幸之助は社員を応援する気持ちが強かった。 リーダー以上、部課長の方々がこれを実践すると、本当に素晴らしい国になるんじゃないかなと思う。現場を盛り上げていく姿勢がとても大事。
・人間大事の思想
1985年の日航機の墜落事故で、松下の社員や家族等の関係者が23人乗っていた。
勤務終了時刻を過ぎての事故だったため、労災認定しないという報告を本社にした所、松下幸之助は「何を言っているのだ? 君たちは家族が死んでいるのに、なんの検討をしているんだ。全員手厚く補償しなさい。」と一喝。更に「本当はこの年寄りが(亡くなった方と)変わらなければいけなかった」と。 企業は社会の公器であり、人材を預かっているのだから、経営者としてどれだけの従業員を大事にできるか。もちろんお客様を大切にするために、優しさだけでなく厳しさも持っていた。
4.自己観照
・自分と向き合うことの大切さ
・リーダーとしての視点
・自分を外に出し、自分を見つめる
自分のことを反省する人は反省する気持ちが強い方は自分のことをよく知っている。
自分で自分のことを外からよく見つめ直してみることが大事。
5.これからの時代に
・松下幸之助の目指したもの
社長を退任し、会長になった後も、現場が非常に上手くいかず経営の悪化が目立ち始めたので、営業本部長に復帰したように、常に激動の時代を歩んできた。
今こそ先が見えないなとか不安な世の中で、その当時と変わらないような状況かもしれない。
この時代を楽しみ、全てがチャンスだと考える。
・今、松下幸之助が生きていたら
個人的な意見ではあるが、「面白い時代なので、自分のやりたいことを精一杯やったら良い。」と言うのではないか。
・現代でも通用する松下哲学とは?
これからも必要だと思うのは、経営理念を本当に浸透させていく現場で、事例をたくさん作っていくということ。
地球環境や、ダイバーシティ(多様性)等も新たに尊重していく必要がある。
しかしながら、人間大事の徹底、社会的責任など、これは時代が変わっても大事なことではないか。
人的資本経営、SDGs、ESGK等の言葉も出てきているが、元々日本では実践している企業が多いのではないか。
終了後、4つのグループに分かれての感想会。
全員の前だと発言を遠慮される方も、小グループということで、ざっくばらんに感想をシェアしました。
水無月の会へのご参加ありがとうございました。
次回は文月の会(7月8日(土))を圓應寺で七夕まつりを開催致します。
どうぞお楽しみに。
以 上
作成 運営副委員長 渋谷浩幸
写真撮影 広報委員 田中奈穂